兵法三十六計 敵戦計3 隔岸観火を知る
兵法三十六計とは
中国の兵法書。
状況に応じた戦術を6つのバージョンに分け
勝戦計 : 自分が戦いの主導権を完全に握っている状況
敵戦計 : 自分が余裕を持って戦いを優勢に進められる状況
攻戦計 : 敵と五分五分か手ごわい状況
混戦計 : 敵が余裕を持って戦いを優勢に進められる状況
併戦計 : 戦いを進めながら外交努力も必要となる状況
敗戦計 : 敵が戦いの主導権を完全に握っている状況
各計ごとに6つの策があげられている。
隔岸観火
読み方
かくがんかんか
読み下し文
岸を隔(へだ)てて火を観る。
内容
紀元前506年、春秋時代の中国において、齊(せい)という国は晋(しん)との戦いにおいて劣勢に立たされていました。齊の将軍である孫臏(そんぴん)は、晋の軍勢が自軍に攻撃を仕掛けてくることを予測しました。
そこで、孫臏は「隔岸観火」という策略を用いました。彼は自軍の兵士に火を持たせ、夜間に晋の対岸である岸上に火を放ちました。これにより、晋軍は岸上の火を見て齊軍が攻撃の準備をしていると誤解し、慎重になりました。
しかし、実際には齊軍は岸上に火を放つことで晋軍の警戒心を高めつつ、実際の攻撃は別の場所で行う予定でした。晋軍は岸上の火に意識を集中させ、齊軍の攻撃が別の場所で展開されることに気付かず、齊軍の奇襲に遭いました。
この出来事が「隔岸観火」として知られ、兵法三十六計の中で戦術的な意味を持つ計略として取り上げられるようになりました。
「隔岸観火」の故事は、敵を欺いたり混乱させたりするために、敵に対して意図的に情報を提示し、敵の判断や行動を導くことの重要性を示しています。このような計略を用いることで、敵の注意を他の方向に引き付け、自軍の奇襲や攻撃の成功を図ることができます。
記述
陽乖序乱、陰以待逆。 暴戻恣睢、其勢自斃。 順以動豫、豫順以動。
書き下し文
陽乖れ(はな)序乱るれば、陰以って逆を待つ。
暴戻恣睢(ぼうるいしき)は、其の勢(いきおい)自ら斃(たお)れん。
順以って動くは豫なり、豫は順以って動く。
意味
敵内部で秩序が乱れているようならば、しばらくは静観して敵の崩壊を待つことだ。横暴残忍な体制であれば、その勢力は自滅する。状況に応じて動こうとするのなら、よくよく考えて備えよ。そうしておくからこそ状況に応じて動けるのだ。
戦術的な意味
「隔岸観火」の戦術的な意味は、敵に対して意図的に情報を提示し、敵の判断や行動を導くことで戦局を有利に進めることです。
具体的には以下のような要素を含んでいます。
- 偽情報の提供: 自軍が敵に対して意図的に誤った情報を流すことで、敵の判断を誤らせます。この偽情報は敵の注意を引きつけ、敵の判断を困難にする役割を果たします。
- 敵の疑心暗鬼を利用: 偽情報や挑発的な行動を通じて、敵対勢力内部に疑心暗鬼を生じさせます。敵の間に不信感や対立が生まれることで、敵の連携や情報共有が乱れ、自軍の優位性を確保することができます。
- 敵の注意を分散させる: 自軍が敵の注目を引くような行動や出現をすることで、敵の注意をそちらに向けさせます。これにより、敵は自軍の本当の意図や攻撃の準備を見誤る可能性があります。
「隔岸観火」は、敵の注意や判断を混乱させることで自軍の奇襲や攻撃を成功させる戦術です。敵を欺き、敵の情報網や組織の機能を乱し、戦局を自軍に有利に進めることを目指します。また、この戦術は敵の心理を読み、その心理に作用することで敵の行動を導く点でも重要な役割を果たします。
会得ポイント
いわば対岸の火事。
チャンスとばかりにつけこんで、目標を達するのではなく、あえて静観して棚ぼたを待つ。
こちらが動くことで相手が一致団結してしまい、チャンスがピンチに変わることもあるから慎重な判断が必要。
大切なこと
相手が数段上手の場合は、内輪もめの一芝居うってくる可能性があるから気をつけて。
こちらが内紛と思い込み、相手を傍観している間に、相手の大仕事が裏で終わってる何てこともある。
出し抜かれたと気づいたときには、手痛い損失を被っていたりすることもある。
相手の内情が正しく把握できていることが、隔岸観火の前提条件なんだね。